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2012,11月

13年目の合格者=前編

 本年の税理士試験合格発表(12月7日)まであと1週間となりました。昨年の合格発表日に官報で合格者の氏名を見ていたときでした。二人の氏名に目が止まり懐かしさがよみがえりました。調べてみると二人とも13年前に求職相談をさせていただき会計事務所へ紹介した方でした。Sくん(男性)とSさん(女性)です。

 13年前はお二人とも26歳でした。Sくんとは13年間年賀状のやり取りもありこちらから電話をさせていただきました。元気な張りのある声が返ってきました。「ありがとうございます。実はアイさんから紹介していただいた会計事務所は昨年末に退職し今年の試験には背水の陣で臨みました」とのことでした。

 合格祝いもあったのでSくんと飲みに行く約束をしました。久しぶりに会ったSくんとの飲み会は話が弾みました。ひとつの目標を手にしさらなる目標に向かうSくんの目はかがやいていました。13年前Sくんが求職相談に来られた時は、大手銀行を退職し簿記論・財表論はすでに取得し法人税法を受験した後でした。

 公認会計士事務所へ紹介したところ銀行での業務経験を評価されすんなりと採用まで行きました。受験した法人税法もその年の合格発表で合格を果たしていました。順調に行けば3~4年で税理士試験に合格するだろうと思っていました。なのに・・・、残りの税法2科目合格までになぜ13年もかかってしまったのか・・・を彼に聞きました。

 「間違っていました」Sくんの開口一番でした。Sくんの話はこうでした。必須税法である法人税法に合格したことも自信となりその後は毎年残りの選択税法を2科目受験し続けたとのこと、結果は6年目に1科目合格し残り1科目はさらに6年受験したが合格を果たせず40歳が目の前まで来てしまっていたこともあり、焦りも出てきて12年も勤めた会計事務所を退職し乾坤一擲、背水の陣を敷いたとのこと

 彼の失敗とは働きながら税法2科目を勉強したことだと云うのです。働き始めたときに欲張らずに1科目だけにしていたらと反省の弁を述べていました。さらに、最後の1科目に合格したその年の受験後の精神的なプレッシャーは軽いうつ病とまで診断されるほどのダメージだったとのことです。

 今年の春、Sくん、いや40歳を迎えたS氏は税理士として大阪のど真ん中、本町で独立開業をしました。そして猛暑となったひと夏が終わりワイシャツに汗の不快感を感じなくなったころS氏から電話が入りました。「運が良かったのか顧問先も少しづつ増えてきました。折り入ってご相談なんですが所員の採用を考えています。近いうちに事務所へ来ていただけませんか」とのことでした。

 会計事務所への人材紹介をさせていただいている私にとって何よりこの仕事をしていてよかったと思う瞬間でもありました。

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13年目の合格者=後編

 13年目に官報合格で名前がよみがえったもう一人のSさんの話をさせていただきます。Sさんが13年前に求職相談へ来られたことは実のところ記憶に残っていませんでした。ただ職業柄氏名だけは記憶の片隅に残っていました。過去の面談記録を調べていくうちに記憶の扉が少し開いてきました。

 13年前のSさんは関西の有名私大を卒業後大手通信会社へ勤めていましたが業界の再編のなかで会社が合併されることになり、将来への不安から組織に依存するのではなく自立して生きていける税理士を目指そうと決意し求職相談に来られたのでした。ただ資格も簿記2級しか持っておらずこれから税理士試験にチャレンジする状況でした。

 本人もこれから受験勉強に入るので会計事務所へはアルバイトとして勤務することを希望していました。当時の記録では開業したばかりの若手の先生の税理士事務所へ紹介しアルバイトとして採用されたことが記されていました。その後その先生の事務所は大阪でも有数の大型事務所へ発展していきましたがSさんのことは記憶の中から消えてしまいました。

 13年後の昨年の官報合格者を見て氏名だけが記憶の中によみがえってきたのですがこちらから連絡は取りませんでした。ところがそのSさんから人材紹介アイのホームページより人材登録と求職相談のメールが送られてきたのです。お会いするのを楽しみに求職相談の日を迎えました。

 Sさんは年齢を感じさせないほど若く聡明な方でした。税理士試験に合格していたこともあり開放感を感じさせるほど明るい方でした。ただ、職務経歴書を見させていただきSさんの13年の道程の厳しさを垣間見ることになりました。

 この13年間当初は会計事務所を4事務所も渡り歩き、4科目まで合格したのに外資系会社の経理へ転進し4年後に再度会計事務所へ転職、税理士試験に合格した後に再び退職をしていました。

 Sさんからそれぞれの転職理由を聞きました。この欄には記載できない理由もありましたがやはり受験と仕事の二束の草鞋を履くことの現実の壁に打ちのめされ、4科目合格した後はバーンアウトしてしまい税理士試験を諦めると同時に人生にも諦め遺書も書いたとのことでした。

 外資系会社で4年間働き税理士試験から離れたことが幸いしメンタリティーもリセットでき再度残りの1科目にチャレンジするモチベーションにもなったそうです。最後の事務所は税理士合格したことが理由となり退職せざるをえなかったとのこと。

 現在、Sさんは自らおっしゃっていますが尊敬できる先生のもとで勤務税理士として日々仕事に励んでいます。先月数名の女性税理士と昼食会を設けSさんをお呼びしました。皆さん溌剌と凛とした女性税理士です。Sさんも負けないほどの輝きを放っていました。Sさんの人生のオセロゲームは税理士試験合格によりすべてがSさんの色にひっくり返りました。

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