今回は税理士N氏の投稿です。N氏は強く印象に残る税理士でした。5年前に求職相談でお会いしN氏自身が希望する会計事務所を紹介させていただきました。N氏は期待以上の仕事をされ本年円満退職し独立開業をしました。N氏の今日までの軌跡をN氏の投稿からお読みください。
 
 私が税理士試験の受験勉強を始めたのは、22歳の時でした。22歳といえば、大学を卒業する頃ですが、私は、まだ大学三回生になったばかりの時でした。高校時代はクラブ活動に没頭し大学浪人の初期にはアルバイトに熱中し結局普通より2年も遅く大学に進学していたからです
 
 今思えば、大変理解のある両親と、裕福とは言わないまでも、それなりに恵まれた経済環境にあったのだと思います。関西のいわゆる有名私大に進学しましたが自分にはもったいない程の学歴を得たものだと当時はそれなりに嬉しかったことを覚えています
 
 その一方で、大学へ進学できたのは、自分の能力や努力というよりも、2年間も浪人することが出来た恵まれた家庭環境のお陰だという気持ちがありました。苦労して学業を積み重ねた友人たちに対しとても後ろめたい気持ちが少なからずありました
 
 私が税理士受験にチャレンジしてみようと思ったきっかけはこの後ろめたい気持ちと無縁ではありません。大学三回生にもなると、周りが就職活動で動き始めます。私も、その波に乗っていれば、おそらく、普通のサラリーマンにはなれていたでしょう。
 
 2年浪人したのにも関わらず、大学では体育会に入部し、全国レベルの有名選手たちとそれなりに真面目に活動をしていました。当時は、暗黙の『体育会系枠』というのがあったようで、まわりを見渡してみても、決して不利な就職戦線を戦うとは思えませんでした。
 
 しかし、大学生の就職活動というのは、やはり学歴(大学名)がものを言う世界です。両親の金銭的余裕で得た学歴に後ろめたさを感じていた私は、それならば、いっそ学歴の関係のない世界で勝負してみようという無謀な志をもったのです
 
 資格商売を営んでいる人が、なぜその資格を取ったのかと問われた時、「その職業に魅力を感じたから」と答えるべきだということは、よく知っているつもりです。ただこれは、その後の後日談や美談であって、実際にはそういう人ばかりではありません。
 
 少なくとも私は、学歴以外のところで勝負してやろうという妙な野心と自分の実力なら税理士くらいが限界だろうという冷静な打算これが税理士試験受験の動機でした。国家試験というものに挑戦してみようというチャレンジ精神が、税理士試験の受験勉強を始めたきっかけでした。
 
 学習は簿記3級の独学(通信)からはじめ、3級・2級を受験せず、約半年で一気に1級まで進みました。学歴を捨てると決めましたから、受験資格に1級が必要だと考えたからです。結果はわずかに届かず合否という面からは失敗からのスタートでした
 
 しかし、ここで大きな収穫がありました合否云々を超えて純粋に勉強自体が面白いなと感じ始めたのです。それなりに、のめり込みました。すぐに、簿記・財表の学習をはじめます。1級取得にこだわりたい気持ちもありましたが、これは素直に諦めました。諦めたことは残念でもありましたが、今振り返ってみると、受験勉強での妥協は、これが最初で最後です
 
 半年間の学習を踏まえ大学四回生の8月にはじめての税理士試験に挑みました。合格発表の前に、私立の大学院に3校合格します。第一志望だった神戸大学の大学院は不合格でした。入試の結果から、一番学費が安く済む大学院に進みました。結果的に、学部から院への内部進学でした。簿財の勉強から会計学の面白さを知りもっと勉強をしたいという学問に対する純粋な気持ちが出始めていた頃です
 
 さて、ここで、大学院による試験免除と税理士受験との関係に言及しておかなければなりません。結論から申し上げると私は簿・財・所・法・消の5科目に合格しています
 
 修士号を持っていますので、申請をすれば簿・財の2科目が免除だったようです(当時は2科目免除)。大学院への進学について試験免除狙いの動機が皆無だったかと問われれば、皆無とまでは言い切れないでしょう。
 
 しかし、学歴で勝負しないと誓った以上、免除申請は私にとってはタブーです。簿財の一度目の受験は失敗していましたので大学院入学後の最初の4ヶ月は必死に簿財の受験勉強をしました。大学院での課題もありましたので、大変でしたが、相乗効果もありました。
 
 幸運にも大学院に入った年に簿財に合格することができました。ここまでは、比較的順調な受験勉強でした。

 
次回(中)に続く。