人材紹介アイの求職相談に来られたN氏は就業したい会計事務所を逆指名してきました。通常は求職相談に来られた方の希望条件等をお聞きして人材紹介アイから会計事務所をご紹介させていただきますがN氏から「K事務所を紹介してください」と云ってきました。今回は最終回、N氏の独立までの話です。
 
  人材紹介アイの松本さんからは、業務レベルが高く仕事には厳しい事務所だということ、私の実績・経験では難しいかもしれないということをお聞きしました。それでも、どうしても話を繋いでほしいとお願いし面接へと漕ぎ着けました
 
 面接の1時間ほど前に、松本さんからお電話を頂き、「自分の思っていることを素直に話してくればいい」とアドバイスを頂きました。
 
 その後、面接で私が申し上げた言葉の中で、真に意味のある内容は、「しがみついてでも頑張りますというその一言だけだったと記憶しています
 
 面接を終えて30分後、松本さんから採用だと携帯に連絡がありました。今振り返ってみると、事前に松本さんが強く後押しをしてくれていたのだと想像しています。
 
 さて、「しがみついてでも頑張る」と言った私の最初の1年は、まさにしがみついているだけの状況でした。仕事は大変厳しく体力・気力ともにタフなものを要求されましたしがみついているだけなのに1円に至るまで残業代も頂きました感謝しています
 
 この事務所には、5年間お世話になりました。普通の会計事務所では経験できないような大きな経験も沢山させていただき小さな経験の積み重ねも沢山させていただきました。その一つ一つは重く、ここで申し上げることは到底出来ません。
 
 今この文章を書いている私はK先生の元を離れ開業税理士としてスタートを切ったばかりですが、税理士としての私のすべては雇って頂いたK先生とご指導して頂いた上司・同僚のお陰だと思っています
 
 しがみつくという気持ちではいましたが、いつかは師匠のもとを離れるというのも必要です。ゼロからの出発で不安もありましたが無理をいって退職をお許し頂きました
 
 退職間際になり、私が担当していたお客様に退職の旨を伝えると、幾つかのお客様から、「顧問契約を解約します」と言われました。お客様から解約と言われたのは初めてで、一瞬意味がわからなかったのですが、それは、私が独立をするならば応援してやろうという意味でした
 

 独立してゼロからスタートすることを決心していましたから、涙が出るほど有り難いお言葉でした。ただ一方で、この業界では、独立時にお客さんの取り合いをするという悪しき風潮があります。
 
 一から私を鍛え上げて頂いた勤務先につばを吐くようなことだけは絶対にしたくないという思いがありました。私のその気持は私よりもずっと年上のそのお客様たちは見抜いていました
 
 『私がK先生のところに行ってきちんと仁義を通すお前は何も心配することは無い』これが、そのときにお客様から頂いた言葉です。
 
 後日、私が退職をする前に、お客様がK先生のもとを訪ねて下さいました。解約の申し出をしに来られたお客様と私を前にして、K先生が言ったのはたった二言です。
 
 『今後ともNのことをよろしくお願いします
 
 『どうか顧問料を下げずに今まで通りNのことをかわいがってやって下さい
 
 過去にもK先生のもとを離れて独立した税理士は70名以上いると聞いています。ただ、私のような不義理なことをした職員がいたということは、聞いたことがありません。
 
 それにもかかわらず、すべてを飲み込んで頂いたK先生に対しては私が一人前の税理士になって恩返しをする以外にはないと思っています
 
 素晴らしいお客様にも恵まれ、また尊敬する先生のもとで修行をさせてもらえたのは、幸運でした。私は、人材紹介アイの松本さんにご縁を繋いで頂き、そのご縁が、5年後にこのようなブログへの投稿と云う形になりました。
 
 私のこの幸運の出発点は人材紹介アイさんを訪ねたところから始まっているのです