2014,5月
S氏の直前対策
税理士試験まで2週間を切りました。この時期になるといつもS氏のとった税理士試験へ向けての直前対策を思い出します。
S氏は大学を卒業後関西の準大手の建設会社へ就職し営業職に就きました。当時地主さん相手に相続対策としてアパート建設の営業をする中で税理士さんと仕事をする機会が多く、彼自身が税理士の仕事に興味をもつようになりやがて本人の転職願望へと変わっていきました。
彼は会社を退職しハローワークで職員数名の個人事務所へ転職し6年の歳月が流れ年齢も33歳を迎えていました。入所当初から3年間は未経験者で先輩職員もおり仕事もそう多くはなく、受験勉強との両立もこなしながら簿財と税法1科目の合格も手にしていました。
ただ4年目に入ったころには彼が職員のなかでは一番の古手となり(会計事務所での職員の在職年数は平均3年弱とのことです)所長先生の片腕となり副所長の役割を担っていました。そのような状況にあるS氏と出会ったのは10年前の秋の気配を感じられる土曜日の求職相談でした。
S氏の相談は副所長になってからは税理士事務所の業務だけではなく新入職員の担当も仕事となり多忙な日々を送っており受験勉強に時間が取れずこの3年間は科目合格から遠ざかっているとのことでした。
彼の能力からして前職でも主任として業務だけでなく部下数名を管理監督していた経験があり副所長としての仕事については当たり前の事としてこなしており苦痛とは感じていませんでした。ただ、会計事務所へ転職したのは税理士に成るためでしたが税理士試験に合格しなければ本末転倒になってしまいます。
S氏は再度一職員としてやり直すため転職というリセット方法を選択しました。そして人材紹介アイから紹介した職員10数名の中規模会計事務所(会計事務所業界は職員5名以下の小規模事務所が90%、5名~20名以下の中規模事務所が9%、20名以上の大規模事務所は1%の割合です)へ転職し一職員として就業しました。
ただそこでも1年、2年と時間が過ぎていきましたが科目合格は出来ませんでした。4科目目は3年目に合格しました。だが4年目は自信を持って望んだ5科目目の相続税法に不合格となり本人曰く「税務署に火をつけようと思うほど国税局を恨みました」とのことでした。
能力的には合格圏内にありましたが果たせず彼は3回目の相続税受験について過去の受験対策とは全く異例なメンタル強化手法を取り入れました。
それは試験直前1週間のホテル缶詰直前対策でした。試験直前1週間でより自身を燃やしながら試験当日に最高に燃えた自身を持っていくことでした。
具体的にはビジネスホテルに試験当日の1週間前に入り、朝8時から夕方の6時までひたすら勉強し、7時にホテルの地下にある居酒屋で食事とお酒も飲み10時には寝ることを日課として過ごすことにしました。
1週間であれば来週はしなくてもよいと集中でき自身を燃やせながら試験当日を迎えられると考えました。S氏は灼熱の太陽のもとその太陽以上に燃えた自身を自信に満ちた状況に置き換え最後の5科目目を手にしたのです。求職相談で出会ってから10年、S氏は職員数名を自身の事務所の職員として管理監督する立場に立っています。