2017,3月
税理士業界の世代交代と承継対策
税理士業界の高齢化についてはこのホームページに掲載している「税理士実態調査報告書」にも明確に記載されています。高齢化は必然的に世代交代をもたらします。開業税理士の世代交代には顧問先の承継対策が最優先対策(顧問先あっての税理士業です)となります。いわゆる会計事務所の事業承継の重要課題です。
現在、開業されている税理士(税理士登録者の77%が個人事務所を開業)の年齢構成は上記報告書によると以下の通りです。
20歳代:0.1% 30歳代:5.0% 40歳代:13.5% 50歳代:18.1%
60歳代:35.4% 70歳代:15.4% 80歳代:12.0% 無記入:0.5%
世代交代年齢でもある70歳以上の開業税理士の割合は全開業税理士の27.4%にも当たります。おそらく今後10年間で80歳代の方と70歳代の半分の方々が世代交代に直面すると推測すれば開業税理士の約20%近い割合の方々(5人に一人の割合)になります。税理士は一身専属の資格業ですからその約20%の開業税理士の方々の顧問先は他の開業税理士(又は税理士法人)へ承継されていくことになります。
今回は税理士の世代交代(開業税理士の事務所の承継対策)についてTKCの「第3回事務所実態調査表」(平成27年6月調査)より関西地区のTKC会員の承継対策についてのデータ(関西地区の近畿大阪会、南近畿会、近畿京滋会、近畿兵庫会の四地域平均データ)をご紹介します。(TKC全国会は全国の税理士登録者約76,000名のうち約11,000名が加盟する国内最大の税理士組織で2021年に結成50周年を迎えます)
1、 事務所の承継対策について
・緊急の課題として考えている 8.2%
・近い将来(10年以内)の課題 27.2%
・近い将来ではないが常に考えている 17.1%
・時々考える 16.8%
・考えたことがない 18.8%
・既に対策が完了している 11.9%
2、 現在の事務所後継候補者の有無
・身内の後継候補者がいる 22.0%
・身内以外の後継候補者がいる 13.7%
・税理士法人化を考えている 17.7%
・上記以外(3、で回答) 46.6%
3、 上記2、で「上記以外」と答えた方の対応
・所内の後継者育成を考えている 27.1%
・今後、所外から後継候補者を採用する 7.3%
・事業譲渡 11.1%
・自然な成り行きに任せる 47.6%
・その他 6.9%
4、 事業譲渡をお考えの場合、優先的に考慮する点(上位3点回答)
・関与先の継続関与 28.7%
・職員の継続雇用 27.2%
・事業譲渡額の有無 10.6%
・利用システムの適合性 10.9%
・相手の性格・能力 21.9%
・その他 0.5%
TKCの上記データによれば35.4%の会員事務所で承継対策は今後10年以内の課題と捉えており、後継候補者については約半数が税理士法人化も含め承継の方向は定まってはいますが約半数は今後の課題であることを示しています。特に後継者の決まっていない会計事務所のうち約半数は「自然の成り行きに任せる」となっています。
前回のブログで税理士試験受験生(40歳迄)の激減現象をお知らせしましたが税理士業界での世代交代と承継対策は待ったなしの重要課題になっているのです。