13年目に官報合格で名前がよみがえったもう一人のSさんの話をさせていただきます。Sさんが13年前に求職相談へ来られたことは実のところ記憶に残っていませんでした。ただ職業柄氏名だけは記憶の片隅に残っていました。過去の面談記録を調べていくうちに記憶の扉が少し開いてきました。
 
 13年前のSさんは関西の有名私大を卒業後大手通信会社へ勤めていましたが業界の再編のなかで会社が合併されることになり、将来への不安から組織に依存するのではなく自立して生きていける税理士を目指そうと決意し求職相談に来られたのでした。ただ資格も簿記2級しか持っておらずこれから税理士試験にチャレンジする状況でした。
 
 本人もこれから受験勉強に入るので会計事務所へはアルバイトとして勤務することを希望していました。当時の記録では開業したばかりの若手の先生の税理士事務所へ紹介しアルバイトとして採用されたことが記されていました。その後その先生の事務所は大阪でも有数の大型事務所へ発展していきましたがSさんのことは記憶の中から消えてしまいました。
 
 13年後の昨年の官報合格者を見て氏名だけが記憶の中によみがえってきたのですがこちらから連絡は取りませんでした。ところがそのSさんから人材紹介アイのホームページより人材登録と求職相談のメールが送られてきたのです。お会いするのを楽しみに求職相談の日を迎えました。
 
 Sさんは年齢を感じさせないほど若く聡明な方でした。税理士試験に合格していたこともあり開放感を感じさせるほど明るい方でした。ただ、職務経歴書を見させていただきSさんの13年の道程の厳しさを垣間見ることになりました。
 
 この13年間当初は会計事務所を4事務所も渡り歩き、4科目まで合格したのに外資系会社の経理へ転進し4年後に再度会計事務所へ転職、税理士試験に合格した後に再び退職をしていました。
 
 Sさんからそれぞれの転職理由を聞きました。この欄には記載できない理由もありましたがやはり受験と仕事の二束の草鞋を履くことの現実の壁に打ちのめされ、4科目合格した後はバーンアウトしてしまい税理士試験を諦めると同時に人生にも諦め遺書も書いたとのことでした。
 
 外資系会社で4年間働き税理士試験から離れたことが幸いしメンタリティーもリセットでき再度残りの1科目にチャレンジするモチベーションにもなったそうです。最後の事務所は税理士合格したことが理由となり退職せざるをえなかったとのこと。
 
 現在、Sさんは自らおっしゃっていますが尊敬できる先生のもとで勤務税理士として日々仕事に励んでいます。先月数名の女性税理士と昼食会を設けSさんをお呼びしました。皆さん溌剌と凛とした女性税理士です。Sさんも負けないほどの輝きを放っていました。
 
Sさんの人生のオセロゲームは税理士試験合格によりすべてがSさんの色にひっくり返りました。